文部科学省科学技術人材育成費補助事業ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)(平成27年度~令和2年度)富山大学 事業報告書
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 これら事業を進め、どのような成果が挙がり、女性研究者の現状はどのように変化したか。以前は、テニュアポストに就く女性研究者であっても、研究環境が整備されていなかったために離職する方が多かったのですが、事業を進めた結果、離職者が85%減となる成果が挙がっています。また、女性研究者在職割合も順調に増加しています。 テニュアポストに就く教授の女性割合を分野別に見ると、女性研究者養成システム改革加速事業において対象分野として取組を進めた理学、工学、農学分野では、2015年度以降は右肩上がりに増加していることがわかります。また、医学系(医学科)分野でも、波及効果として女性割合が増加しています。一方、薬学、歯学分野では、女子学生割合が高い分野にもかかわらず、女性教授割合が増加しておらず、減少傾向にあり、今後の大きな課題と考えています。 女性研究者の研究力が強化されたか、科研費の獲得件数と獲得金額から検討してみました。事業実施機関の女性研究者の科研費獲得件数、獲得金額ともに順調に増加しており、研究力が強化された結果と考えられます。日本学術振興会(JSPS)のデータを基に、全国の研究者の科研費新規採択率の推移を男女別に見ますと、2017年度以降女性研究者が男性研究者を上回っている状況が見て取れます。全国的に見ても、女性研究者の研究力が強化され、科研費新規採択率が上昇していることが分かります。 しかし一方、課題もあります。大型研究費の研究総括に就任している女性研究者の数を調べると、例えば、科学技術振興機構(JST)で実施しているCRESTやさきがけでは、それぞれ女性は1人しかいない状況です。大型研究費を先導するような女性研究リーダーの育成はまだこれからといったところです。 文部科学省以外の他省庁でもさまざまな女性活躍推進の取組を実施しています。経済産業省ではダイバーシティ2.0を立ち上げ、「新・ダイバーシティ経営企業100選/100選プライム」や「なでしこ銘柄/準なでしこ」の選定を行っています。企業における女性リーダー育成を支援し、女性起業家等の支援ネットワーク事業も実施しています。 このように日本全国で女性活躍を促進しているわけですが、ダイバーシティ・マネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンという状況には十分至っていません。ダイバーシティの一つとして、組織に女性をはじめ多様な人材を積極的に取り込んではいるものの、多様な人材を活用し、組織のパワーバランスを変え戦略的に組織改革を行い、組織のパフォーマンスを向上させる段階には至っていません。3. ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた働き方改革 今後、女性の活躍をさらに推進するためには、働き方改革が重要なポイントになります。男女ともに、特に男性の働き方改革が推進されないと、女性の活躍は推進できません。昨年から、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた働き方改革を目指し、時間外労働の上限規制の導入、年次有給休暇の確実な取得の推進、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差の禁止といったさまざまな取組が進められています。 女性研究者をはじめ女性の活躍を推進する上で大事なことは、継続することです。継続は力なりです。女性研究者の活躍促進、一旦止めてしまいますとすぐ以前の状況に戻ってしまいます。ぜひ今後も、継続して、女性研究者の活躍推進を進めていただけますようお願いいたします。22

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