文部科学省科学技術人材育成費補助事業ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)(平成27年度~令和2年度)富山大学 事業報告書
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1. 取組みの成果 全国でも新しい試みである国際型女性研究者育成プログラムを導入し、若手・中堅女性教員を対象として、海外短期留学支援を自学経費で展開した。長期間職場を離れられない女性研究者に、留学の心理的ハードルを下げることにより、新しい研究方法のスタイルを提案することができた。一方、提案時には具体化していなかったシニア女性研究者への支援として、国際シンポジウム企画開催助成を行うことにより、研究力の向上並びにマネジメント力の醸成機会を提供した。このような特色ある事業を企画運営したことにより、女性研究者自身の企画・運営能力の向上のみならず、その後の国際共同研究への発展、そして、企画・運営に携わった若手研究者等に対する大きな刺激にもつながった。また、短期留学した女性研究者が帰国後ロールモデルとなり、若手研究者に留学経験を伝えることで、次世代女性研究者の層と質を充実させる仕組み作りが可能となった。これらの取組により、国際的視野を持つように意識することで、大学組織の運営が活性化され、女性研究者による卓越した研究成果が継続的に生み出される環境が整備された。そして、女性研究者の業績を世界へ発信し、そのプレゼンスを高め、正当に評価を得る方策として、国際的研究者データベースへの積極的参加を促した。つまり、研究力及び発信力の向上が双方とも等しく重要であることを示唆する新しい試みとなった。 このように女性研究者の年齢層に応じた研究力強化に向けた取組としての、短期海外留学支援や国際シンポジウムの企画開催助成は、きわめて効果が高く、費用対効果も適切であると判断できる。 また、ライフイベントやワーク・ライフ・バランスに配慮した研究環境を整備するため、男女共同参画推進室に保育コンシェルジュと介護コンシェルジュを配置したことも、全国的にも新しい試みであった。このうち、病児・病後児保育支援は、大学附属病院小児科の協力を得て安全かつ確実に運営されており、県内の病児・病後児保育施設のモデルケースとして、影響力を持っている点で高く評価できる(富山県でも病児・病後児保育施設は平成26年の14ヶ所から令和2年の29ヶ所へと飛躍的に増加している)。さらに、介護に関しては富山市の地域包括支援センターと連携することで女性研究者が、遠距離介護等を担う場合にも身近で的確な情報提供や相談を受けられる体制が構築され、毎年利用されている。 女性研究者のライフイベント及びワーク・ライフ・バランスに配慮した研究環境整備を継続的に行ってきた結果、平成27年度~令和元年度までの間に女性教授6名、准教授1名、客員准教授1名、講師及び特命講師への昇任2名、助教への昇任6名の合計16名が昇任し、女性研究者の上位職登用の促進効果が認められた。また、各職階の女性比率は緩やかであるが上昇傾向を示し、女性研究者の採用に関して成果が認められた。 また、本取組みにおける各種学内公募の採択を受けた女性研究者は論文執筆や外部研究資金の獲得など研究活動に意欲的に取り組んだ結果、科研費採択率も漸増し、平成29年度にはピークが見られ、その後も業績を伸ばして上位職への昇任につながった。このような女性研究者が活躍できる研究環境の継続的整備と研究力強化によって、今後も指導的地位に占める女性研究者割合の継続的増加が期待できる。 また、研究支援者を配置した女性研究者の研究業績や、復帰・復職支援によりスタートアップ研究費等の研究費支援を受けた研究者の研究業績に見られるように、女性研究者の研究活動の活性化と研究業績の向上効果が示された。 本事業の取組みのために前述の3つのプロジェクト「意識」「組織」「環境」の変革を目指した中で、この3つは有機的に関連し、意識、環境変革とともに組織強化が徐々に進行し、平成28年度には男女共74

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